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議案第42号「財産の取得について」の反対討論(=学研高山第2工区はこうすべしとの提案)    

 

 この議案は、独立行政法人都市再生機構(以下、「UR都市機構」とします)が、学研高山第2工区内にニュータウン事業地として買収し、その事業が中止になったのちも所有している約132.5ヘクタールの土地(以下、「当該地」とします)<「UR所有地位置図ご参照」を3億4000万円で取得することの適否を問う議案ですが、現時点で当該地の売買契約を締結することには、次のような2点の問題点があります。

 

 1点目は、当該地の土地売買をめぐって疑問が残ることです。

 

 2月臨時議会での当該地取得のための補正予算審議の中で明らかになったように、昨年9月定例議会で実施が可決された当該地の土地鑑定評価の作業が始まったばかりの昨年10月にはすでに当該地の買い取りを前提とした価格交渉が開始されています。土地鑑定評価の結果も見て当該地を買い取るか否かを判断すべきであるのに、土地鑑定評価の結果が出るはるか以前に、すでに当該地の買い取りが決められていました。納得できません。

 

 また、不動産鑑定評価書の提出期限は今年222日でしたが、それが提出される前の鑑定評価価格書.pdfが内示されただけの段階の2月9日には買い取り価格が決定されました。

 

 こうして、当該地の土地利用計画が明確に決定されないまま、国民の税金を原資とする約600億円で買収された当該地を土地鑑定評価額の約10分の一の3億4000万円で取得することが決められたのです。

 

 10(H22)12月に閣議決定された「独立行政法人の事務・事業の見直しの基本方針」ではUR都市機構のニュータウン事業については「平成30年度までの土地の供給・処分完了に向けた取組を促進する。」となっており、当該地の処分完了まであと3年あるにもかかわらず、明確な土地利用計画の作成がされないまま、また、なぜこの買い取り価格なのかという明瞭な根拠も示されることなく、更には、今年度中に土地売買契約しなければならないというやむを得ない理由も不明なまま、拙速に当該地の売買が行われることは認めることができません。

 

 過去の足湯工事事件総合スポーツ公園用地購入事件を持ち出すまでもなく、かかる高価な土地売買にあたっては、一点の曇りもあってはならないのです。疑問が残る土地売買契約を行なうことは、大きな問題です。

 

 なお、今、当該地を市が買わなければ、UR都市機構は民間開発事業者に切り売りしてしまい、それにより学研高山第2工区(以下、第2工区とします)は乱開発されてしまうかのような説明もありますが、生駒市民の意に反するような行為をUR都市機構がするかのごとき説明は、国民の福祉つまり幸福と、国民の安寧つまり安心の実現のために事業展開しているUR都市機構に対して大変に失礼です。そもそも、当該地内の都市計画道路は着工予定がなく、それゆえ、その他の上下水道などのインフラ整備計画についても作成の予定すらない開発不可能な用地を民間開発事業者が買うはずもありません。

 

 さて、次に、問題点の2点目は、市が当該地を取得する目的は、当該地の自然破壊につながる開発にあることです。

 

 このことは、先の2月臨時議会における「当該地を3億4000万円で取得するため一般会計を補正する議案」に対する反対討論 でも述べましたが、重要なことゆえ補足しながら再論します。

 

 当該地の明確な土地利用計画は未作成ですが、当該地を取得するに当って市が作成した「第2工区の将来のあり方によれば、当該地を取得する目的は、「学術研究と産業の発展」「広域的連携」「都市と農の共生」の3つを第2工区の目指すべき将来像として掲げてまちづくりを進めていくことです。

 

 1つ目の「学術研究と産業の発展」とは、「学術・産業施設ゾーン」を設けて、「新たな雇用を創出し、税収を生む産業施設の誘致」、つまり「学術・研究施設や研究開発型産業施設に加え、生産施設、いわゆる『ものづくり産業』施設の誘致」を進める、ということですが、学術・研究施設や研究開発型産業施設の誘致地区である高山第1工区の2区画への誘致がいまだに実現できておらず、第1工区にせっかく誘致できたNEC研究所も撤退してしまったことを考慮すると、「学術研究と産業の発展」とは「ものづくり産業施設の誘致」つまり「ものづくり企業の集積=工業団地の形成」となるでしょう。

 

 生駒市に工業団地は必要ないわけではありません。第2工区において、当該地以外の一般地権者所有地面積相当分においては工業団地の形成を検討しても、当該地にまでもそれを形成するような大規模な工業団地は不要であります。なぜなら、生駒市にはすでに北田原工業団地があるからです。この工業団地は、工業用道路・下水道といった工業インフラがまだ完備されておらず、全域111haのうち約23haがまだ未利用地となっています。この工業団地の整備充実形成こそ進めるべきです。この工業団地は今年3月2日に学研生駒テクノエリアへの改称を公表し、未来へ向かって発展していくことを宣言しています。拡大することも視野に入っている※学研生駒テクノエリアの充実拡大こそ推進すべきです。 ※土地利用の方針図.jpg都市計画マスタープランより)ご参照/企業誘致に関する提言書<08(H20)年9月>に「北田原工業団地における市街化区域の拡大について」の記載あり。  

 

 さて、「第2工区の将来のあり方」の2つ目は「広域的連携」です。これは「広域的な交通ネットワークの構築強化」とのことで、要するに第2工区において、広域を結ぶ東西と南北を貫く幹線道路をつくることであります。

 

 以上の「学術研究と産業の発展」及び「広域的連携」とは、つまり、面的整備と幹線道路整備であり、それは山を削り谷を埋めて自然の土地形状を改変し、緑を喪失させるものであります。

 

 本市の緑被率調査によれば、平成11年度については、全市域(都市計画区域/5,318.0haの67.4%(市街化区域1,812.2haで36.6%、市街化調整区域3,505.8haで83.4%)、平成20年度については、全市域(都市計画区域/5,318.0haの60.7%(市街化区域2,123.0haで35.5%、市街化調整区域3,195.0haで77.4%)となっており、10年間で6.7%もの緑が失われています。

 

 本市で、緑が失われてきているという傾向がある中、もし、本市面積の約5%を占める288haの第2工区の緑の多くが失われれば、一挙に本市の緑被率が下がり、生駒市は環境破壊都市といわれることになるでしょう。

 

 「第2工区の将来のあり方」の最後の3つ目は「都市と農の共生」です。これは、「農と緑のゾーン」を設けて、環境モデル都市に相応しい「里山の保全と利用」を進めるものであるかのように捉えることができます。他自治体の「里山の保全と利用」のための土地利用計画では、「都市と農の共生」「農と緑」というような文言は「里山の保全と利用」の意味で使用されているからです。先の2月臨時議会のときには、そのように思っておりました。

 

 しかし、今議会で私が行なった一般質問(生物多様性の保全と持続可能な利用について)で、第2工区の生物多様性の保全と利用について質問したところ、検討するとの答弁があったのみで、第2工区において、生物多様性の保全と利用、つまり里山の保全と利用を進めていく旨の答弁がなく、また、本議案を付託審査した都市建設委員会では、今後の検討の中で「農と緑のゾーン」も開発の対象となり得るとの答弁があったことを考えると、今後の検討次第では、「第2工区の将来のあり方」でいう「都市と農の共生」もまた、面的整備、つまり山を削り谷を埋めて自然の土地形状を改変し緑を喪失させるものとなってしまうおそれがあります。そうなれば、第2工区は全面開発されてしまうことになります。

 

 このような、第2工区の大部分または全面を面的整備する。つまり、山を削り谷を埋めて自然の土地形状を改変し緑を喪失させることを目的とした土地取得は到底認めることはできません。

 

 環境省の説明や国が策定・推進している「生物多様性国家戦略2012-2020」によれば、生物多様性の危機をもたらしているものは4つあります。

 

  第1の危機は、開発など人間活動が自然に与える多大な影響

 

  第2の危機は、里山などの手入れ不足による自然の質の低下

 

  第3の危機は、外来種などの持ち込みによる生態系のかく乱

 

  第4の危機は、地球温暖化など環境の変化による危機

 

 以上の4つですが、

 

 市の当該地の主たる取得目的は、第2の危機たる第2工区の荒廃を排除すると唱えて第2工区が荒廃し得ない状態にする、つまり面的整備する、端的にいうと更地にしてしまうというもので、それは、自然に多大な影響を与える開発やそれによる外来種の持ち込みの機会の増大や緑の喪失による地球温暖化等の環境の変化という第1・第3・第4の危機を巨大化させるものと言わざるを得ません。

 

 里山である第2工区の荒廃、つまり自然の質の低下をもたらしているものは手入れ不足にあるのですから、それを行なう体制をとってこなかったことを反省し、それを行なうことで荒廃を克服していく努力こそが求められています。荒廃を克服するために荒廃しようのない状態にする、つまり開発してしまうというのは本末転倒です。

 

 もちろん、広大な第2工区全域を手入れするというのは不可能ですから、その約4割の一般地権者所有面積相当分は開発するゾーンとして地権者の理解が得られる土地利用を行い、約6割を占める当該地面積相当分は「生物多様性保全上重要な里地里山」として位置付けた土地利用を行うゾーンとするのがよいでしょう。そのゾーンも広いので、できる限り里山の維持・再生のための手入れを行い、それができない部分は、順調な遷移を阻害するツル繁茂等を排除する程度の管理を加えて、あとは自然の遷移にまかせることで生物多様性の保全をはかる遷移誘導型管理を行なう地区とするのが効果的です。自然の遷移にまかせることによる生物多様性保全の有効性については、約70haの明治神宮の森約100haの万博記念公園自然文化圏が示しています。

 

 未来を見据えて、生物多様性の危機を克服することで持続可能な人類社会をつくっていくことは、国際的要請<このページの(3)をご参照>であり国家戦略となっています。

 

 その流れの中で、304haの国営武蔵丘陵森林公園234haの国営あいな里山公園530haのあいち海上かいしょの森保全活用計画180haの兵庫県立ささやまの森公園等々の里山を保全・活用する公園が国や各県によってつくられ、各市町村でも、例えば、大規模なもので東京都町田市における380haの北部丘陵の活性化計画、中規模なもので京都府木津川市における152haの木津北地区の土地利用計画、小規模なもので神奈川県鎌倉市における37haの山崎・台峯だいみね緑地保全実施設計等々が策定・施行されるなど、国も都道府県も市町村も苦労し工夫をこらしながら、未来を見据えて里山地域における生物多様性の保全・利用を図る施策を進めています。

 

 こんな中、生駒市は未来に背を向けて、生物多様性の危機を増大させる施策を進めることは許されません。

 

 生物多様性の危機を増大させることは、国際的要請や国家戦略に逆行する行為です。

 

 生物多様性のめぐみを受けて、はじめて私たちは暮らしていくことができます。当該地の生物多様性を喪失させることは、市民の暮らしを危険にさらすこととなります。

 

 市民の暮らしを危険にさらすことになることを土地取得の目的とした土地売買契約は認めることはできません。

 

 UR都市機構による当該地の処分完了まであと3年あるのですから、国際的要請や国家戦略にそった市民の福祉安寧につながる有意義な当該地の土地利用計画を作成し、その上で、当該地の移管に関する取り決めをおこなうべきであり、市民の納得が得られない拙速な土地売買契約は行なうべきではありません。

 

 第2工区が持つポテンシャル、つまり力を生かすためというのも開発しようという根拠になっていますが、開発によって土地の力が引き出され人々に幸せをもたらすというのは前世紀型の古色蒼然たる発想です。第2工区は確かに大きなポテンシャルをもっていますが、それは、私たちの暮らしに生物多様性のめぐみを与える力です。20世紀のような工業生産力が低い時代には、開発、つまり、山を削り谷を埋めて自然の土地形状を改変し緑を喪失させて、幹線道路をつくって車をたくさん走らせ人や物をたくさん運び、工場等をたくさんつくつて物をたくさん生産して生産力を上げるということは必要でしたし、それが土地の持つ力でもありました。しかし、現在は21世紀です。開発など人間活動が自然に与える多大な影響を克服することこそが求められています。一般地権者所有面積相当分についてはともかく、当該地まで開発することは、第2工区が持つポテンシャル、つまり私たちの暮らしに生物多様性のめぐみを与える力を粉砕することになります。

 

 第2工区が持つポテンシャルを生かすためと唱えながら開発することで、逆に第2工区が持つ未来を切り開く素晴らしい力を人間が粉砕してしまうという愚かな行為は絶対になさらないようにお願いいたします。第2工区が持つ生物多様性のめぐみを与えるという力を生かすことこそが、私たちに持続可能な暮らしをもたらしてくれます。それが今、私たちが採るべき正しい道です。

 

 以上、当該地を取得するため売買契約を締結することについては大きな問題点があります。

 

 最古の里山である生駒の第2工区が、前世紀に舞い戻ったかのような光景が広がる地ではなく、「日本や世界の未来を切り開いていく地」になってほしい。そんな願いを込めながら、やり方も内容も不適切な契約を行うとの本議案に反対する討論を終わります。

 

 

 

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